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お問い合わせが多いので
自然派のワインとお酒について書いてみました
当店は自然食品店でもあることから今、流行の「自然派ワイン(ビオワイン含む)」や「自然酒(有機日本酒等)」についてのお問い合わせをよくいただきますので、こちらのページに当店の考え方を書いておきます。
賛否両論ありますが、あくまで私的な意見ですので、当店御利用の際にお役立て下さい。

まず始めに当店の結論として、この「自然派」については否定もしますし、肯定も致します。
ワインや日本酒は原料そのままに醸造し、人間の口に入る物ですので、原料に農薬は残留しておらず、化学化合物の添加などはしていない方が良いに決まっています。
しかしながら無農薬・無添加で本当に美味しいものは存在するのでしょうか?
その辺りからお話しさせていただきます。

もう10年以上も昔になりますが、私が尊敬し、愛して止まないイタリアのモンテプルチアーノの生産者に「ペペ」という生産者がおり、娘さんが来日した際に彼女と色々とお話しする機会がありました。
当時、私はワインの保存料である亜硫酸塩(SO²)を添加していないワインは長期保存には向かないと信じていたのですが、「私達のワインには亜硫酸塩(SO²)を添加していません」と彼女の口から驚きの言葉が。
なぜ驚いたのかというと彼女たちのワインは数あるモンテプルチアーノの中でも本当に秀逸な物で、その頑強な酒質のために生産してから20~30年熟成させてから出荷するといったものだったからです。
そして彼女は更に「私達の葡萄はすべてオーガニック栽培をしている」と付け加えました。
このことも全く情報がなかったので驚きました。
その事実を聞いた上で私は彼女に「何故、無添加なのにこんなにも長期熟成が可能なのか?」と質問しました。
彼女は笑顔で「私達はオーガニック栽培を実践しているって言ったでしょう。それは代々変わらない私達の栽培方法。健康的で生命力のある葡萄を育て、健全な醸造で作られたワインは、ワイン自体も生命力を持ち、自分の生命力で長期熟成に耐えることができるの」
この言葉は衝撃的でした。
私は「でも、ボトルのバックラベルには亜硫酸塩と書いてありますけど何故ですか?添加していないんですよね?」とすかさず質問。
彼女は「何でかしら?でも、私達は本当に使用していないのよ。でも、亜硫酸塩というものはワイン自身が醸造中に自らつくりだす物だから別に嘘ではないわね」
またまた衝撃!
私はまだワインの勉強中で何も知らない頃でしたから、こんな常識的な事も知りませんでした。
早速、輸入元に尋ねてみると彼等は「バックラベルを別に作らなければいけないから全部共通して使っているんだよ」との言葉。
しかし、後々、色々な輸入元に尋ねてみると前述した理屈でワイン自身が生み出す物だからそのまま記載しているというところが多いようです。

この話は数年前に同じようなことを日本酒の蔵元にも聞きました。
その蔵元は当店でもお馴染み、私が最も尊敬する福井県の南部酒造場「花垣」
この蔵の社長である南部さんは一般的に販売されている「自然酒」というものに疑問を持ち、「私が本物の自然酒を造ってみせる」という思いからオーガニック認定まで取得しました。
これは日本酒業界にとっては凄いことです。
詳しいことは商品ページをご覧下さい。
その南部社長が言った言葉が印象的でした。
「日本酒は原料の酒米が重要。酒米が生命力溢れる物であれば、できあがった酒も生命力に溢れ、長期熟成にも耐える素晴らしい酒質の物ができる」
何と、前述のワイン生産者と同じことを言ったのです。

私は仕事柄、日本はもちろん世界中の飲食や化粧品にいたるまで色々な生産者とお会いしてきました。
彼等に会い、彼等のつくったものを口にし、使ってみて一つの共通点があることに気付いています。
それは「良い生産者は安全で良いものをつくっている」ということ。
飲食について言えば「美味しいものは安全で当たり前なのです」
今まで出会った生産者のうち、味や使い心地等の機能性の前に「当社の商品は安全ですから」と言ってしまう生産者で美味しいものや使い心地の良い物などほとんどありません。
むしろダメな物が多いです・・・何故でしょうか?

それは彼等が「売れるため」に安全を追求しているからです。
その結果、最も大切な部分を忘れてしまっているのです。
「最も大切な部分」
嗜好品であればそれはもちろん「味」です。

近年、「ビオ・ワイン」、「ビオディナミ・ワイン」、「ヴァン・ナチュール」、あるいは「自然派ワイン」ブームでヨーロッパ、特にフランスのロワールや南フランスなどではビオ・ディナミ(生体力学)、ビオ・ロジック(有機農法)の生産者が急増し、日本にも多くが輸入されているため私達はそういったワインを試す機会が多くなってきました。

今から6年ほど前でしょうか?
私の手元に初めて「自然派ワイン専門輸入業者」というところから試飲会の知らせがあり、私も「酒と自然食品の店にピッタリではないか!」と思い、早速、参加させていただきました。
しかし・・・並んでいたワインはハッキリ言って酷い物でした。
中には酸化しているのではないか。瓶内二次発酵をしてしまっている等々、問題ばかりで当然、その会社とは取引はしませんでした。
ただ、後々に勉強していくことにより、その時の私は無知だったと思い知らされますが、今でもこの手のワインは苦手です。
白ワインなどは特に見るも無惨な真っ茶色になったリンゴを思い浮かべる「すえた」香りがあり、苦手です。
しかしながら世間でドンドンと認知度が上がり美味しいとされる「自然派ワイン」になれなければと思い色々と試してみました。
その道のプロフェッショナルといわれるワインショップに車を飛ばし、著名な優良生産者と言われる生産者を薦められ、「自然派ワイン」特有の還元臭が気になるなら抜栓してから2~3日経ってから飲みなさいと言われ、そういったことも試してみましたが、やはりダメでした・・・
ただ単に私が苦手なのかも知れません。。。

だからといって当店に「自然派ワイン」がないかというとそうではありません。

当店では私がすべて試飲してから仕入れを行っているのですが、試飲する際に私はワインや日本酒等の資料は一切目を通しません。
できれば産地も伏せてテイスティングします。
それは人間の「先入観」というものが大きな比重を占めてしまうからです。
こうやって商品選びをするのでその商品がビオ・ディナミ(生体力学)だろうが、ビオ・ロジック(有機農法)だろうが、知る由もありません。
美味しかったので後々調べてみたら「自然派ワインだった」というのが、当店で置いてある商品です。
例えばブルゴーニュのシャンベルタンで知られるドメーヌ・トラペやイタリア・トスカーナのテヌータ・ディ・ヴァルジャーノ等はその代表的なワインです。
日本酒であれば当店で人気急上昇中の和歌山県・吉村秀雄商店の「鉄砲隊・車坂」などでしょうか。

つまりは私が苦手としている「自然派ワイン」の中にも美味しい生産者はたくさんいます。
彼等は前述した「ペペ」と「花垣」のように「美味しいものをつくる」ために結果、自然派となった物がほとんどです。
決して「売れるため」に自然派となったわけではありません。
更に追求して言えばワインや日本酒に限らず、公表していないだけで実はオーガニック栽培による原料を使用しているという生産者がたくさんいます。
彼等は決まってこう言います。「だって美味しいものをつくるためなんだから良い原料を使うのは当たり前。それがたまたまオーガニックだったということ。当たり前の事を全面に出して公表する必要はないじゃないですか?」
私はこういった生産者を応援していきたいです。

今の段階では名前は出すことができませんが、先日、国内のビオ・ワイン生産者に会うことができました。
彼は数年前よりマスコミに注目され、つくりだされるワインはリリース後、即完売しワイナリーには何もない状態が続いています。
彼は言っていました「マスコミが取り上げてくれることで、自分のやっていることや自分の造ったワインが皆に知られるのは嬉しいこと。しかし、ビオということだけでワインは売れてしまう。僕のワインはまだまだなのに・・・中には熱狂的な応援をしてくれる人達がいるのだけれども、その人達以外のほとんどの人が美味しいとかじゃないんだよね」
そして彼は私が常々、思っていることを口にしました。
「そもそも『自然食品』って何なんでしょうね?だって僕のワインでも無農薬有機野菜でも畑でつくられているのだから人間の手が掛かっている訳で、その時点で自然じゃないですよね?自然にこだわるって言ったって毎日、山や海に入って食料取ってこれないですよね。だから僕は自然派と言われているけど自分では全然そう思わない。もうマスコミの取材は受けるのやめますわ」
確かにそうだ。彼とは妙に気が合いました。
毎年、出来映えを見ていきたいので、そのうちに御紹介できるかも知れません。

長々とした文章になってしまいましたが、ここまで読んでいただいたついでに先々から出てきている亜硫酸塩(SO²)についても書いておきます。

当店では私の記憶だと私が中学生の頃でしたから20年以上に渡り、無添加ワインという物を扱っています。
当店におけるこの無添加ワインの代表は長野県塩尻の「井筒ワイン」なのですが、このワインは当店の社長である父が昔から好きなワインで、今ではメジャーとなってきましたが、当店では私が物心ついたときからずっと扱っています。
もう10年程前でしょうか、私が店に入ってすぐに赤ワインブームなる物が到来し、このワインを始め「無添加ワイン」が大ブームとなりました。
「無添加」であれば何でも売れてしまう時代です。
この時期には大小問わず、各メーカーから様々な無添加ワインが登場したのですが、そのほとんどに共通されたのが、「不自然な感じ」でした。
ワインは醸造中にも酸素に触れることにより酸化が始まり、瓶詰め後も酸化及び劣化が進むのですが、その際の過度な酸化を抑え、適切な熟成を行ってくれるのが、亜硫酸塩(SO²)の役割となります。
前述のように生命力のある葡萄ならばその頑強な酒質と自らつくりだす亜硫酸塩(SO²)の作用により長期熟成が可能なのですが、ヤワな酒質ではそうはいかず長持ちはしません。
そこで人工的に亜硫酸塩(SO²)を添加するのですが、そこそこのワインで亜硫酸塩(SO²)無添加でつくるとどうなってしまうのでしょうか?
当然の如く、そのワインは過度の熟成を起こし、一年も経たないうちにダメになってしまいます。
そこで大手メーカー達はどうしたかというと・・・
そのほとんどが一度、加熱処理をするか目の細かいフィルターを通し、保存が効く状態にし、ボトリングされています。
加熱処理された場合は「煮詰めた」ような不自然な味わいが口の中に残り、細かいフィルターの場合は旨味や赤ワインには重要なタンニン分も過度に取り除いてしまうため何とも水っぽい様なものとなります。
それよりも問題なのは国産ワインとして売られているもののほとんどが南米等でつくられた濃縮葡萄ジュースに砂糖を加え発酵させた「ワインのようなもの」であり、このようなワインを亜硫酸塩(SO²)無添加で発売するといったことです。
そもそもこういった商品は必要なのでしょうか?
正直、私はこういった商品を「美味しい」と思ったことがありません。
「美味しい」と思えない商品が「無添加」だからといって買い求めるのは何の意味があるのでしょうか?
「健康」のためでしょうか?
それならば飲まないのが最も健康的だと思います。
ポリフェノールを取れるからとよく耳にしますが、本来、ポリフェノールを多く摂取できるワインという物はボルドーワインのように葡萄本来のタンニン分が多く、さらには新樽での熟成による樽からのタンニン分がワインに溶け込んだ物だけだと聞いています。
ブームが過ぎた今も全量国産のようなふれこみで全量がこのようなワインという生産者(というか工場)が存在するのは嘆かわしいことです。

このように亜硫酸塩(SO²)は過度な酸化を抑え、適度な熟成を得るために重要な存在で、特に高級ワインとは切っても切り離せないものなのです。
つい最近出会った生産者である栃木県の渡邊葡萄園醸造所「那須ワイン」の渡邊さんはこのことで人生が大きく変わってしまった一人だと思います。
彼は120年以上の歴史を持つワイナリーの息子として生まれたのですが、彼の実家であるワイナリーはその歴史中ずっと無添加でワインを作り続けていました。
しかしその代々続くワインはつくられてから数ヶ月でダメになってしまう酒質だったのです。
彼はそんなものはワインじゃないと家を飛び出し、もう日本でワインは造らないという決心の元、ワインのボルドーで身を埋め何とあのシャトー・ピション・ラランドやロバートパーカーが愛して止まないシャトーヴァランドローの醸造家として活躍することになったのです。

この渡邊さんもそうですが、亜硫酸塩(SO²)は使用しないくても良い状況なら使用しなくて良いし、使用しなければならないときは使用しなければいけないと良質な生産者達は口を揃えて言います。

お店でお客様と接していると一般消費者の方々(一部プロとされている達も含め・・・)は一般的に「自然派ワイン」は無農薬有機栽培された葡萄を原料に亜硫酸塩(SO²)無添加でつくられたワインと思っておられる方々がほとんどです。
しかしながら「自然派ワイン」の多くの考え方は栽培についてはあくまで「有機栽培」であり、農薬は必要最低限使用する。
亜硫酸塩(SO²)も必要最低限の使用。
そして両者ともできれば使用しないのが理想的。
この考えは「自然派」に限らず優良な生産者であれば皆、共通する考え方だと思います。
ワインだけに限らず優良な農産物生産者に共通していえることですが、彼等は農薬は「人間にとっての薬」と同じだと言います。
農産物も人間と同じようにその年の気候状況などにより不健康な状態に陥ったり、害虫が大量発生したりと病にかかります。
そういったときに必要になるのが農薬で、人間でいったら病気にかかって無理をし続けて取り返しがつかなくなる前に薬を投与し、健全な状態に戻してあげる必要があるのと同じで果物も全く同じ事が言えます。特に葡萄やりんご等は無農薬は非常に難しく、ヨーロッパにおいてはまだ良いものの日本においては非常に厳しい自然環境にあります。
そして亜硫酸塩(SO²)については現在、ヨーロッパにおいて優良生産者のほとんどは厳しい日本の基準からしても基準の10分の一以下程度しか使用しておらず、ワインが自らつくり出す亜硫酸塩(SO²)の量とさほど変わりません。
さらには動物実験によると、体重50kgの人間が毎日75本のワインを2年間飲み続けても全く悪影響が出ないことが確認されています。

以上のように私の結論は「自然派だろうがそうでなかろうが、美味しければ飲む(食べる)」ということです。
是非、皆様を「美味しいもの」を楽しみ、人生を楽しみましょう。
物を飲み食べる度にあまり考えすぎてしまうのは、「美味しい」という人間の楽しみを少し削ってしまっているような気がします。
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